学習院女子大学・フードコンシャスネス論ご報告
〔 2016年4月15日 〕

2016年4月15日フードコンシャスネス論1において江口名誉教授がご講義されました

 

4月15日(金)「特別総合科目Ⅸ(フードコンシャスネス論1)」(品川 明教授担当)において、江口泰広学習院女子大学名誉教授(1968年(昭和43年)学習院大学

経済学部卒/日本フードサービス学会会長ほか)に“フードコンシャスネスの教育的意味”と題して講義を頂きました。

講義の内容は主に以下の項目から構成しています。

1.フードコンシャスネス(Food Consciousness)の意味

フードコンシャスネスという概念が提起された問題意識(①人にとっての本質的意味、②新しい教育手法)についての解説があり、特にフードコンシャスネスの目指す教育が、これまでの栄養学を中心にした知識・情報提供型教育ではなく、人間のもっている五感をフル活用した“食そのものを積極的に意識する食教育”の構築を目指していることが指摘されていました。

2.フードコンシャスネスの基本的考え方

 フードコンシャスネスは“食べること”“食べるもの”“食べ方”という日常的な行為をきちんと意識し、食に対する自覚的かつ積極的な能動型姿勢を育むことを目的としています。 

つまりフードコンシャスネスは人間の五感を通じてその感性や能力を積極的に引き出す人間力復活型教育であり、その基本に感覚、嗅覚、味覚教育を位置づけています。

そして学際性を前提に感性教育や体感学習を通じた“味わい教育”による知の体験機会を社会に提起し、子供から大人までの食に対する五感を耕し、生きる力、考える力、文化や未来を創造する力の育成を目指しています。

3.食のクオリティ

食のクオリティの意味には栄養面、健康面、五感で味わう美味しさはもちろんのこと、食に関連する文化的、社会的、経済的、環境的、道徳的、教育的等の価値や意味が含まれるが、当講義ではでは主に教育的意味について解説されました。

フードコンシャスネスの教育的意味には、教育の本質である好奇心、観察力、問題発見力、体感力、想像力・創造力、表現力、味わい力、コミュニケーション力、食の権利、育む力、感性力等の内容が含まれ、それらの教育的効果は既に学会でも発表されています。

  フードコンシャスネスはこうした教育的活動を通じて人々の意識と行動を変えていき、教育的価値連鎖=EVCEducational Value Chain)によって良き社会変革をもたらすことを標榜しています。

4.学びの本質

 フードコンシャスネスは失われつつある人々の感性を見つめ直し、“食は命なり、食は社会なり、食は地球なり”を意識できる豊かな知性と感性の喜びをもたらす人間教育を標榜しているが、フードコンシャスネス教育は気づきや発見を教育の原点にしているため、学ぶことの本質の再認識にも貢献できます。

 

 江口名誉教授のテンポがよく魅力的で分かりやすいフードコンシャスネスの概念解説は同名誉教授の現役時代を髣髴させるものであり、確り学生たちの問題意識を喚起したようです。

ちなみに、フードコンシャスネス論は学習院女子大学では唯一の寄付講座(江口名誉

教授はその創設者)であるが、もともと新たな食教育のあり方としてのフードコンシャスネス概念を構築した品川教授と共に学習院女子大学をベースに世界に広めようとされて

います。