フードコンシャスネス研究所設立の目的
フードコンシャスネス研究所(IFC:Institute of Food Consciousness)は、学習院女子大学フードコンシャスネス実行委員会(注1)が開催した「こころで結ぶ命のおむすび」の講演会(2011年12月)および国際シンポジウム&ラボラトリー「食から耕す未来と文化:フードコンシャスネスとエデュケーショナル・バリュー・チェーン」(注2)を提唱したことから始まりました。
注2:2012年2月11日~15日に、イタリア政府教育省認定の味覚教育教師養成機関「イタリア味覚教育センター(イタリア・トスカーナ州)」との連携で、学習院女子大学にて開催。後援は文部科学省、農林水産省、イタリア大使館。
私たちは国内外の様々な研究者、教育者、企業、行政機関との連携によって、「食を自覚的に意識する(フードコンシャスネス)」という視座から、新たな食育を通じた人間教育を推進しています。
研究所の中心的な活動の一つに「フードコンシャスネス(味わい)教育」講座があります。これは食を五感と心で味わい、多くのつながりに気づくことを通じて食の本質を理解することを目的とした感性活用型体験教育です。
「フードコンシャスネス(味わい)教育」は単なる味覚教育や栄養教育の食育ではありません。
講座の受講者は五感の意味を自覚しながら、生きる力、考える力、感謝する力、感動する力、コミュニケーションする力、文化や未来を創造する力を育んでいくことを、研究所独自のファシリテーションを通じて体験し習得できます。
当研究所は『「食べるもの」「食べること」「食べかた」から考え、育てる、知の未来』を合言葉に、自らの五感という感性を耕し、心を育む新たな人間教育を通じて社会貢献をしていきます。
フードコンシャスネスの7つの要素
フードコンシャスネスの7つの要素 | |
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心で食べるフードコンシャスネス (味わい)教育 |
五感と心で食べる食教育を『心で味わうフードコンシャスネス(味わい)教育』と定義し、感性活用型体験食育の指導を目指す。(食を味わうためには五感の能力をフルに活用し、心を育むことが重要である。) |
5つの心の本質的理解 | 「有り難うの心」「頂きますの心」「ご馳走様の心」「勿体無いの心」「お陰様の心」という5つの心の本質的理解を促す。(これらは本来食を自覚的に意識することを通じて心の底から湧きいずる魂の言葉である。) |
新たな教育手法 | Teach(教える)ではなくEducate(引き出す)を推進する。食を教える教育を見直し、食を意識し、行動する教育へ。(そのためには食を感じる食育が必要である。) |
教育者(教員)のための教育 | 新たな視座による食教育の教育手法(概念と具体的方法論)の研究・開発・提供を推進する。(人々の食に対する基本姿勢の多くは学校教育の影響を受けるが、その主要な役割を果たすのは教員である。)食(いのち)の権利の重視 食の役割を理解し、食の価値を知る。(食がなにを伝えようとしているのか、心と五感を通じて体感する。)食は命であり、材料ではない。(「食財」という認識が求められる。) |
食(いのち)の権利の重視 | 食の役割を理解し、食の価値を知る。(食がなにを伝えようとしているのか、心と五感を通じて体感する。)食は命であり、材料ではない。(「食財」という認識が求められる。) |
教育的価値連鎖 (EVC:Educational Value Chain) |
フードコンシャスネスを基盤に、教育的な価値の連鎖(EVC)を社会に喚起する。(行政、産業、教育機関、地域社会、消費者等々とのバリューチェーンを構築し、日本のみならず世界に貢献する。) |
共創的価値の共有 (CSV)Creating Shared Value |
到達点は共創的に生み出された価値の共有(CSV)である。(EVCを起点に新しい価値を創り出し、社会の構成員である様々な組織や人々と分かち合い、豊かな社会を創造する。) |
教育的価値連鎖は社会も変える
私たちが推進する「教育的価値連鎖(EVC:エデュケーショナル・バリュー・チェーン)」とは、あらゆる立場の人々が「食」を自覚的に意識するフードコンシャスネスを通じて意識と行動が変わり、それが連鎖反応的動きとなって、結果的に社会が変わっていくような効果を見込むものです。
たとえば「もたいない」という言葉一つをとっても、その考え方と行動を通じて人々の小売店での食品の選び方が変わるでしょうし、レストランでのメニューの選び方も変わることでしょう。
小売店での食品やレストランでのメニューの選び方が変われば、生産者の生産物に対する姿勢や作り方あるいは扱い方も変わるでしょう。
そうすると生産者に対する行政の指導や支援の仕方も変わり、製産・配送・販売・回収・廃棄というサプライチェーン(供給連鎖)にも変化が起こり、そうした一連の体系化した社会システムを地域社会で展開したいというコミュニティが出てくるでしょう。もちろんそれを研究対象にする大学や研究機関も出てくることでしょう。
ソーシャル・コンシューマーといわれる社会性意識の高い消費者が着実に台頭してきている今日、当然こうした連鎖は広く経済や社会、文化、教育にも波及し、大きなうねりとなって社会を変えていくことでしょう。
教育はいつの時代でも国力の原点です。学歴と同様に”食歴”と真摯に向き合うことが問われています。
教育は社会のあらゆる活動の推進力となりますが、食を自覚的に意識するフードコンシャスネスという食育がよりよき社会づくりの起爆剤となれば、それは私たちの望外の喜びとするところです。