(フードコンシャスネス論は(一社)フードコンシャスネス研究所からの寄付による寄付講座です。)
6月14日(金)「特別総合科目Ⅸ(フードコンシャスネス論Ⅰ)」(品川 明教授担当)において、早稲田大学 先進理工学部 化学・生命科学科 中尾洋一教授に「食と遺伝子のスイッチ」と題して講義を頂きました。
本講は「食べ物は体にいいのか?」という問いから始まり、「どういいのか?」を深く考えてもらうことを意図した、理系的なアプローチによる食品研究の紹介でした。
食品の機能性が社会的な注目を集めているにもかかわらず、その機能性を調べるための研究法はいまだに限られた手法にとどまっているため、「食の機能性をデジタル化できる方法はないか?」という視点から遺伝子スイッチの研究が進められました。
食品は薬と異なり効果が穏やかで、効果・効能が明確にあるとはなかなか言えないことが難点ですが、研究結果で判明したことは、遺伝子のスイッチは化学物質によって簡単に切り替わるということです。
それを食品成分にも応用できるのではないかということで、日本が誇る伝統的な発酵食品である味噌の研究を行いました。
日本には味噌の製造元は全国に1000社ほどあり、そこから約100種類の味噌を選んで成分を解析しました。味噌の分析を通じて遺伝子のスイッチを切り替える味噌の成分を突き止めました。
そして本成分は発酵過程で生じる味噌特有の成分であること、および味噌に含まれる本成分がアストロサイトを増加させ、ストレスを緩和することがわかりました。
今回は食品の機能について未知の部分が多いこと、そしていたずらに宣伝に乗せられる消費者ではなく、食品の機能を見極めたうえで有効活用しようとする賢い消費者としての意識を高めることの大切さを認識させられる講座でした。
(まとめ:楠野恭巳)