実務に活かす

フードコンシャスネス(味わい)教育は多様な視点で食の本質を学ぶ食育です。その視点と問題意識はビジネスの多様な領域や場面で活かすことができます。

1.教育活動

*教育関連の方

2018年、食育への意識を広げかつ新たな視点を得るために、杉並区、江東区、新宿区教育委員会や埼玉県教育委員会、入間市教育委員会の依頼で、同地域の小・中・高学校の栄養教諭、管理栄養士、栄養士、学校調理士などを対象にフードコンシャスネス教育を実施しました。
その後いくつかの小学校からの依頼で食育研修会、食育授業指導、出前授業を実施しました。これ以外にもフードコンシャスネス教育は幼・小中高大学・専門学校等の授業で、アクティブラーニング型の単独授業としても活用できます。
フードコンシャスネス教育は単なる味覚・栄養教育の食育ではないため、環境や科学、歴史や文化等の他の科目との連携を通じた食育が可能です。また、個々人の能力啓発型教育のきっかけを作ることにも活用できます。

*生産に携わる方

① 存在意味の再確認:JA南アルプス市やJA神奈川の女性部会でフードコンシャスネス教育を行いました。その中で自分たちがいかに社会において重要な役割を担っているかや食の本質的な意味を再確認できたというご意見を頂きました。また、農の社会的意義を理解してもらうために、フードコンシャスネス教育を自分たちの地域社会や学校等々に広げていきたいと要望されていました。

② 生産物の特徴理解:生産者は自分の手掛けている作物の本質を知らないことが意外とあります。五感を活用したフードコンシャスネス教育を通じて、生産者視点ではなく消費者視点から作物の特徴やその本質を体感(発見・理解)し、その成果を作物のネーミングやPRに有効に利用することができます。

*フード・コーディネーター/フードコンサルタントの方

フードコンシャスネス・インストラクターの中にはフード・コーディネーターやソムリエやその他食関連の資格をもつ方が少なくありません。多くの人は食を食“材”として扱ってきましたが、フードコンシャスネスを通じて食の本質的な意味が理解でき、食育セミナーの開催はもとよりメニュー開発や食の表現等の実務活動で、新たな視点で食とその世界をこれまで以上に広げています。

*管理栄養士/栄養士

栄養の知識をもつ有資格者がフードコンシャスネスの本質を理解すると、想像以上の領域で自分の知識や技術が活用できることが実感でき、自分自身の価値の伝達の仕方が変わります。
労働環境の良くない職場にいたある管理栄養士の方は、フードコンシャスネス教育を受けることで自分の社会的意味とやるべきことを再認識し、転職の決意を新たにしました。
フードコンシャスネス教育は食の本質とその世界の広がりに目を向けることができるため、自分のキャリアを広い視点で見直す機会をもたらします。

*レストラン関連に携わる方

レストランを舞台として、味覚・栄養等という一般的な食育とは異なった視点で講座を開催することが可能です。(感動や心あるいは繋がりなどのフードコンシャスネス的“新たな切り口”で差別化できます。)
もちろんメニュー開発やプレゼンテーション方法の視点も変わります。特にキッチンやフロア等のスタッフ研修で、専門学校では学ばない食の新たな側面(食と心、食と感性など)を通じた学びや気づきは意識変革に大変有効です。
またフードコンシャスネス教育の中には自分自身の味覚力をチェックする5段階テストや感じ方講習がありますが、料理に関わる仕事をしながら意外と自分の味覚力や味わい力の特徴を認識できていない方(結構多い)には有効な研修となることでしょう。

*小売店に携わる方

売り場あるいは催事において、食関連の新たな視点による食育セミナーが開催できます。例えば「食べ比べ」アクティビティなどを通じて、食べ物の目に見える感性価値や見えない価値を伝えることによって、“コト情報”型販売活動が展開できます。また社員研修としてのフードコンシャスネス教育は、食に携わる社員や店員の食に対する“心の姿勢と態度”を大きく変えます。

2.商品開発 / メニュー開発 / 販促・PRに活かす

*メーカー・卸・小売業


メーカーでは商品開発者が食あるいは食“財”の本質とその世界を体感することで、食を新たな視点で位置づけることができ、新製品開発のヒントを得ることも可能となります。
製品のネーミングや特徴を発信する際にも、食“財”の本質とその世界をフルに感性と心を活用して体感することで、これまでとは異なった表現・発信が可能となります。
フードコンシャスネス教育はR&D(研究開発)や商品開発担当者、マーケティングや販促担当者の育成のみならず、RSS(Retail Support System:小売支援システム)のプログラムの一つとしても有効です。
また小売業でも、店員がフードコンシャスネス教育を通じて意識が変わり、新たな視点による切り口を得ることを通じて、商品陳列の方法やPOP(店頭広告)の表現が大きく変わり、顧客とのコミュニケーションの仕方にも変化をもたらします。
 

3.企業のCSR(社会的責任)活動に活用できます。

フード関連機器を製造しているメーカー(例えば(株)テスコム電機)は、工場の130名の社員全員にフードコンシャスネス研修を実施し、工場見学者へのプログラムとして、また同社の地域貢献活動(親子食育セミナーなど)のひとつとしてフードコンシャスネス教育を積極的に展開しています。
加えて、製品特徴を顧客に明確に伝えるためにもフードコンシャスネスの視点が有効です。

4.その他の活用


イベント開催のプログラムに活用できます。
企業やNPO等の地域貢献活動や老人・養護施設に活用できます。