講義では、食事を軸として“専門知と総合知” “文化と文明” “仕事と労働” “進化と深化” “日本と西洋”などの幅広い事柄について、関連付けながらお話しいただきました。
「食事」というと、食べることや食べる人について考えられることが多くなっていますが、“食べる”の前には必ず“つくる(料理する)”があり、「食事」とは「つくって、食べること」、人間は料理をしたからこそ人間になったこと、人間にとって料理をすることの大切さを教えてくださいました。
家庭料理など無償の愛情による料理では、作る人が食べる人のことを自然と慮り、季節感や健康状態や好みにあった食材を選んだりすること、料理する人と食べる人のあいだには情緒が生まれ数値では表せない関係性があることを学びました。
また、文化とは土地と繋がっているものであり、日本の文化の特徴は自然との原初的な繋がりを持つこと、だからこそ旬の食材を“はしり”“さかり”“なごり”のように細やかに受け取る感受性が持てていることを知りました。
それこそが日本人のオリジナリティであり、ものごとを深くみつめ“深化”させる力があると実感しました。
土地と繋がった暮らしの中で私たちの命や文化が育まれていること、自然の恵みである食材を深く見つめ自分の判断で料理する(食べられるようにする)ことができれば、なにかに頼らず自立できることを教えていただきました。
これからの時代を生きていく学生たちに向けたエールのような温かいご講義で、学生からも様々な質問が寄せられました。
土井先生は質問に対する答えだけでなく、そこから繋がるお話を広げていただき、学生の理解が深まる時間となりました。
(記事:関原成妙)